子どもはケガがつきもの。
その不幸はいつどこで起こるかわかりませんが、学校活動中のケガであれば「スポーツ振興保険」をぜひ活用しましょう。保険料の一部を国や学校が負担するため保険料を抑えることができたり、学校経由で保険の申請ができるので手間がかからなかったりと、メリットはたくさんあります。
手続きが面倒そうという理由で、スポーツ振興保険を利用しない方も多いと聞きます。でも申請は意外と簡単。
この記事では、先日、学校の授業中に骨折した中学生が完治するまでに実際に支払った金額、そして保険でどの程度まかなえたのかなど、詳細な金額とともに解説しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
記事内では
- スポーツ保険に入ってるけど、実際いくらくらい給付されるの?
- 学校の保険はほかにもあるけど、それとの違いは?
- 自治体の医療助成制度を使うのと、どっちがお得?
- 結局、どの保険が一番良かった?
といった疑問を、著者キリコが実際に総額〇〇〇万円受け取った実例とともに解説します。気になる詳しい金額について知りたい方は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
実例!授業中の骨折で3つの保険を利用した話
ある日の昼下がり、突然「お子さんが体育の授業中にケガをしました」と学校から連絡が。
先生によると、授業中にボールを受けた際に腕を負傷したとのことで、「スポーツ振興保険に入っているので保障が受けられます」と書類を渡されました。
そういえば、スポーツ保険のお知らせが来てたっけ・・・
確か「加入する」にマルつけて提出したような・・・?
そう。周りのママ友も入るって聞いたし、掛け金も数百円だったし、とりあえず加入申込書を提出していたのです。あの時の軽い決断が、まさかこんなにも大きく家計の助けになるとは思いもしませんでした。
診察の結果は腕の骨折。ここから完治までの約1年6か月で、合計4度の手術&入院。その合間に月2回ほどの診察と、週2日のリハビリを受けてきました。
全部でいくらの支出があったのか、そしてスポーツ振興保険以外も含め、各種保険会社からいくら給付があったのか、すべて公開します。
加入していた保険の種類
加入していた保険の種類は全部で3つ。すべて性格の違うものです。
学校(PTA)の団体保険である「PTA保険」です。地域によっては「子ども総合保険」や「小中学生総合保障制度」と呼ぶところも。学校(PTA)が民間の保険会社と契約し、団体扱いで比較的安く加入できる傷害保険です。
保険会社が学校(PTA)を通した団体保険の位置づけであり、契約はあくまでも個人。事故等があった場合には学校ではなく直接保険会社とのやり取りになります。
※PTA保険の契約先には地域によってさまざまであるため、以降「損害保険」と記します。
相互扶助を目的にしたもの。みんなでお金(掛け金)を出し合って、困っている人を助けましょうという考えです。非営利事業であり、民間の保険会社が扱う「保険」とは根拠となる法律が異なることもあり、別扱いです。
学校・国・保護者が掛け金を出し合い、学校管理下のケガに限って保障される保険です。事故等があった場合は学校とのやり取りだけで、手続きは学校側でおこないます。
自治体の医療費補助制度とは併用ができません。
学校で配られるパンフレットには、PTA保険(損害保険)とスポーツ振興保険がありますが、上表のように、内容は全く別のものです。混同しないように注意しましょう。
PTA保険をもっと詳しく知りたい!という方はこちら。
スポーツ振興保険についても、詳しく解説しています。
実際に支払った金額
今回はスポーツ振興保険を利用したため、自治体の医療費助成制度は受けていません。健康保険を利用し、医療費総額の3割の負担で治療を受けました。
まずは、実際の入院・通院・手術の回数を見てみます。
- 通院 180日目まで:49回/180日目以降:150回くらい
- 入院 180日目まで:5日(3日+2日)/180日目以降:22日(9日+13日)
- 手術 4回(それぞれの入院時に1回ずつ)
完治するまでの1年6か月の間の出費がこちらです。
1年6か月の医療費総額 = 824,222円
入院代や手術代はもちろんですが、週2回のリハビリや診察で、窓口で毎回千円ちょっとの通院代を支払っていたものの積み上げも大きいように思います。
また、この金額は健康保険証を利用して都度窓口で支払った医療費の他に、以下のような出費が含まれます。
- 病院への交通費、駐車場代
- 入院自費分(タオル代・差額ベッド代など)
- 保険会社への書類にかかわる診断書代
- 消毒用品、三角巾、サポーターなど
実際に給付された金額と内訳
最終的に給付された、いわゆる「保険金」は
1,700,244円
となりました。3つの保険会社の合算です。
前述したように、実際に支払った医療費は824,222円。
その差額は
1,700,244円 – 824,222円 = 876,022円
でした。今回のケースでは、かかった金額の倍程度、受け取れたことになります。
倍額って、すごくない!?
なぜそんなに多くの金額となったのか、各保険での給付内容を確認してみましょう。
実際に給付された、保険種類ごとの合計金額はこちらです。
損害保険 | 共 済 | スポーツ 振興保険 | |
---|---|---|---|
給付額 | 197,500円 | 460,000円 | 1,042,744円 |
年間掛金 | 16,000円 | 12,000円 | 460円 |
年間掛金と給付金の比率に驚くのではないでしょうか。
それでは、それぞれの保険会社ごとの給付金の内訳を細かく見ていきましょう。
約款上の規約は以下のとおりです。
- 通院一回当たり:2,500円
- 入院一日当たり:5,000円
- 入院中の手術:50,000円
実際に給付された金額は、197,500円。内訳を以下に記載します。
- 通院
-
2,500円 × 49回 = 122,500円
- 入院(3日 + 2日 = 5日)
-
5,000円 × 5日 = 25,000円
- 手術(1回)
-
50,000円 × 1回 = 50,000円
損害保険は[当該事故から180日以内の入院]が保障されるため、事故から181日目以降の入院(3回目以降)は保障の対象外でした。また、手術も[1事故につき1回のみ]という保障内容のため、1回目の手術分のみが給付対象となりました。
通院に関しては、損害保険・共済ともに、180日間、90日を限度とした通院が保障されます。
ケガ当日から180日目までの90回までは対象になりますが、今回のケースでは週に2回のリハビリで、180日間での通院は49回でした。それ以降、一年にわたり計約150回の通院をしましたが、49日分で打ち止めです。
結局、一番良かったと思う保険は・・・
自治体の医療補助制度を使えば数百円で済むことも多いですが、少額で済むとはいえ、出費があることは事実。その点、スポーツ振興保険なら、支払った額以上の給付があるので「お得」と言えるでしょう。
ただ、手続きが面倒だからとスポーツ振興保険を利用しない選択肢をとる方も多いようです。ほかにも保険に加入しているという理由で、スポーツ振興保険は不要だという考え方の家庭もあります。
様々な考え方はありますが、今回、我が家で入っている3つの保険のうちで一番「加入していて良かった!」と実感したのはスポーツ振興保険でした。
金額面でももちろんそうですが、それだけではありません。
理由① 簡単な手続き
書類を病院で書いてもらって学校に提出するだけ。
手続きは簡単なんです!
通常、保険請求の手続きには手間がかかります。スポーツ振興保険なら、病院に書いていただいた書類を学校に提出するだけです。
後日、必要書類が送られてきます。保険会社の指示に応じて領収証などの必要書類を用意します。けがをした時の状況を詳細に記載する必要があります。
保険会社所定の診断書を病院に持参し、診断書を書いてもらいます。5,000円程度かかります。
提出後、数週間で入金されることが多いよう。スポーツ振興保険よりも早く入金される印象です。
理由② 補償期間の長さ
在学中のケガは卒業後も保障されるんです。
対象の期間はなんと10年間!!
通常の保険は、ケガをした日から180日以内の通院が保障されることが多いようです。つまり、181日以降は健康保険の3割負担で受診するか、自治体の医療助成制度を利用するということ。
スポーツ振興保険の場合は10年もの期間があるため、ほとんどの場合、完治するまで費用に関する心配をしなくて済むということになります。
理由③ 給付される金額
給付金額が一律ではないんです。
実際にかかった金額+αが給付されるから助かります!
一般の保険は通院一日につき〇千円、入院一日につき〇千円、手術1回につき〇万円・・・というように、保障の内容が決まっています。つまり超過してしまった分は自身で負担する必要があるということ。
スポーツ振興保険の場合は、保険証を提示して受診し窓口で3割を支払いますが、申請することによって4割分給付されるため、実質、自己負担はありません。(入院時のタオル代や寝具代など一部自費分は対象外のものもあります)
どうして実際に払う金額より多く受け取れるの?と、疑問ですよね。これは実際の負担金3割に加え、見舞金として1割分が受け取れるのです。この1割分に関しては使途は問われません。通院のガソリン代の足しにしても、食事代としてもOKです。
保険会社による補償内容や手続きの違い
今回の保険利用を受け、改めて驚いたことは、保険会社によって保障内容や手続き時の提出書類などが異なることについて。「入院一日につき〇千円」などという文言は大きな違いはありませんでしたが、実際の保障内容・手続き方法は大きく異なっていました。
- 事故1回につき、手術代は1回のみの支払いである損害保険に対し、共済は手術代の制限は設けていないこと。
- 事故に関する180日以降の入院は対象外とする損害保険に対し、共済は当該事故に関わらず、対象となること。
- 申請時に領収証のコピーが必要な損害保険に対し、自己申告のみでOKな共済。
- 通院が180日間で50回以上あった場合は医師の診断書が必要(通常5,500円)な損害保険に対し、これもまた自己申告のみでOKな共済。
あくまでも著者の加入する損害保険会社の例ではありますが、保険料(掛け金)は大きく変わらなくても、申請時の手間暇を考慮すると、この損害保険会社と共済では個人的には共済に軍配が上がりました。
そもそも共済は利益追求ではないということもあり、掛け金も安く、子ども向けの保障が手厚いとも言われています。子どものいる家庭には一考の余地がありそうです。
まとめ
今回の話は、あくまでも「保険給付金」という金額面だけの話。
ケガをした本人の痛み・慣れない入院生活の苦痛・手術やリハビリの苦労、後遺障害とまでは言えないものの身体へ残った複数の傷。
また週2回のリハビリのために、学校の遅刻早退、塾や部活などの時間の調整のほか、私自身も病院まで往復1時間以上の道のりの送迎や学校の先生との話し合い、他の家族の食事時間の調整などなど、ここに書ききれない苦労はたくさんありました。
ケガなんて、しないのが一番。でも自分が気を付けていても、学校生活を過ごしている以上どうしても避けられるものではないことも事実です。
今回は、ケガをした本人の辛さもさることながら痛々しい姿を見る家族の辛さもありましたが、保険に加入していたおかげで金銭面での心配をしなくてもよかったのは本当に助かりました。
まさに「備えあれば憂いなし」と実感したところです。
保険はその人の状況や環境によっても変えていくべきもの。適切に保険に加入し、適切な利用をしたいものですね!